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やりすぎ都市伝説で語られた鬼滅の刃・炭治郎の幻の初期設定|連載中止寸前だった裏話を解説

2020年に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が日本映画の歴代興行収入記録を塗り替え、社会現象を巻き起こした『鬼滅の刃』。その人気は国内に留まらず、全世界のファンを魅了し続けています。

引用:https://www.animax.co.jp/programs/NN10002636

多くのファンが物語の細部まで愛し、考察を深める中で、ひときわ有名な一つの「都市伝説」が存在します。それは、主人公・竈門炭治郎の、あまりに過酷な“初期設定”に関するものです。

この噂は、人気番組「やりすぎ都市伝説」で取り上げられたことで一気に広まり、多くのファンに衝撃を与えました。もし、この初期設定のままだったら、私たちが知る『鬼滅の刃』は生まれなかったかもしれません。

この記事では、連載中止の危機にまで瀕したという炭治郎の幻の初期設定、それが現在の物語に与えた影響、そして作品全体のテーマ性との関わりについて解説・考察していきます。


第1章:衝撃の初期設定|幻の「竈門炭治郎」の姿

今や誰もが知る、心優しく努力家の少年・竈門炭治郎。しかし、作者の吾峠呼世晴先生が最初に構想していた主人公像は、私たちが知る彼とは大きくかけ離れた、壮絶な運命を背負う少年でした。

1-1.「両足義足、右腕なし、盲目」という過酷な設定

その幻の初期設定とは、以下のようなものです。

  • 両足が義足である
  • 右腕がない
  • 目が見えない(盲目)

まさに満身創痍。五体満足な部分がほとんどない状態で、鬼にされた妹を人間に戻すために戦う——。この設定を聞いただけでも、物語がいかに重く、ダークな雰囲気になるかが想像できます。

当時の『週刊少年ジャンプ』といえば、『ONE PIECE』や『NARUTO -ナルト-』といった、明るくエネルギッシュな主人公が活躍する王道のバトル漫画が主流でした。その中で、これほどまでに重いハンディキャップを背負った主人公は、極めて異質であり、挑戦的な試みだったと言えるでしょう。

1-2. なぜ「身体の不自由さ」がテーマだったのか?作者の意図を考察

では、なぜ吾峠先生は、これほどまでに過酷な設定を主人公に与えようとしたのでしょうか。そのヒントは、ハンディキャップを持つ主人公が登場する他の名作に見出すことができます。

例えば、手塚治虫先生の『どろろ』では、身体の48か所を魔物に奪われた主人公・百鬼丸が、失われた身体を取り戻すために旅をします。また、『ベルセルク』のガッツも、片腕と片目を失いながら、巨大な剣を振るい過酷な運命に抗い続けます。

引用:虫ん坊 2018年10月号(199):TezukaOsamu.net(JP)

これらの作品に共通するのは、「欠損」や「不自由さ」を乗り越えようとする人間の強い意志や、逆境の中で見出す希望という普遍的なテーマです。吾峠先生もまた、そうした人間賛歌の物語を描こうとしていたのかもしれません。失われたものを渇望し、絶望的な状況から這い上がろうとする主人公の姿は、読者に強烈なカタルシスと感動を与えるポテンシャルを秘めていました。


第2章:連載中止の危機と「主人公」の誕生秘話

その挑戦的な設定は、しかし、商業誌である『週刊少年ジャンプ』の連載会議で大きな壁にぶつかります。

2-1. 編集部との激論:「少年漫画の主人公」とは何か

「この設定では、読者が感情移入するにはあまりに辛すぎる」 「毎週読むのが苦しくなってしまうのではないか」

編集部からは、読者層である子供たちへの影響を懸念する声が上がりました。少年漫画の主人公には、読者が自分を重ね合わせ、共に成長していけるような「等身大の魅力」や「明るさ」が求められる傾向があります。その点において、初期設定の炭治郎はあまりにも悲壮感が強く、読者を突き放してしまう危険性を孕んでいたのです。

議論は紛糾し、『鬼滅の刃』の企画そのものが連載中止の危機に瀕します。作者が描きたい世界観と、雑誌が求めるエンターテイメント性の間で、大きな葛藤があったことが伺えます。

2-2. サブキャラから主人公へ:現在の竈門炭治郎の誕生

この絶体絶命のピンチを救ったのが、編集部からのある提案でした。

「サブキャラクターとして用意していた、別の快活な男の子を主人公にしてはどうか?」

そのサブキャラクターこそが、家族思いで、生来の優しさと頑固さを併せ持つ、私たちが知る竈門炭治郎だったのです。この決断は、作品の運命を決定づけるターニングポイントとなりました。

主人公を現在の炭治郎に変更することで、物語には読者が感情移入しやすい「光」が生まれました。彼のひたむきな努力や、絶望的な状況でも失われない優しさは、多くの読者の心を掴み、応援したいと思わせる魅力に溢れています。


第3章:魂の継承|幻の設定は「竈門禰豆子」へ

では、幻の主人公が背負うはずだった「身体の不自由さ」という重いテーマは、完全に消え去ってしまったのでしょうか?いいえ、その魂は、もう一人の主人公である妹・竈門禰豆子へと、形を変えて見事に受け継がれたのです。

3-1.「話せない」ヒロインの革新性

鬼となった禰豆子は、竹の口枷をはめられているため、言葉を話すことができません。これは、従来の少年漫画のヒロイン像を覆す、非常に革新的な設定でした。

セリフに頼らず、表情や仕草、行動だけで感情を表現する禰豆子の姿は、読者の想像力を掻き立てます。彼女が何を思い、何を感じているのか。兄・炭治郎とのやり取りの中からそれを読み解いていく過程は、他の作品では味わえない独特の感動を生み出しました。

3-2. 鬼としての「不自由さ」と内面の葛藤

禰豆子が背負う不自由さは、口枷だけではありません。

  • 鬼の本能:人を襲いたいという衝動と常に戦い、眠ることで理性を保っている。
  • 太陽の克服:物語中盤まで、太陽の下を歩くことができない。
  • 人間としての記憶:家族の記憶が曖昧で、意識も完全ではない。

これらの設定は、幻の炭治郎が背負うはずだった「肉体的な不自由さ」を、「種族としての不自由さ」「精神的な不自由さ」へと昇華させたものと言えます。彼女はただ守られる存在ではなく、自らの内なる鬼と戦い続ける、もう一人の主人公なのです。

この設定変更により、禰豆子は単なる「悲劇のヒロイン」から、「共に戦うパートナー」へと進化を遂げました。この兄妹の絆と共闘関係こそが、『鬼滅の刃』を唯一無二の物語へと押し上げた最大の要因と言えるでしょう。


第4章:「弱さ」と「優しさ」の肯定|作品全体に与えた影響

この主人公設定の変更は、単にキャラクターを変えただけではありません。『鬼滅の刃』という作品全体のテーマ性を確立し、現代社会に響くメッセージ性を与えるという、計り知れない効果をもたらしました。

初期設定の「ハンディキャップを持つ主人公」というテーマは、形を変え、作品全体に「弱者への慈しみ」という形で浸透しています。炭治郎は、敵である鬼に対しても、その過去を思いやり、悲しみの連鎖を断ち切ろうとします。彼が斬った鬼の多くが、人間だった頃の悲しい記憶を取り戻しながら消えていくシーンは、本作の大きな特徴です。

これは、誰もが何かしらの「弱さ」や「痛み」を抱えて生きているという現実の世界とリンクします。完璧ではない主人公たちが、互いの弱さを補い合い、支え合いながら強大な敵に立ち向かっていく姿。その「優しさ」と「連帯」の物語こそが、多くの読者の共感を呼び、社会現象となるほどの熱狂を生んだのです。


第5章:考察は終わらない|鬼滅の刃に眠るその他の都市伝説

炭治郎の初期設定以外にも、『鬼滅の刃』にはファンの探究心をくすぐる多くの謎や都市伝説が存在します。

  • 鬼舞辻無惨が竈門家を襲った本当の理由 全ての元凶である鬼舞辻無惨は、なぜ一介の炭焼き一家である竈門家を襲ったのか。作中では明確に語られていませんが、「太陽を克服する鬼を創り出す実験のため」「かつて自分を追い詰めた”始まりの呼吸の剣士”の耳飾りを継承していたから」など、様々な説が考察されています。
  • 「青い彼岸花」の正体 無惨が千年もの間探し求めていた「青い彼岸花」。その正体は最終回で明かされますが、連載中は「特定の血筋のことではないか」「禰豆子のことではないか」など、ファンの間で白熱した議論が交わされていました。

これらの謎や伏線が、物語に奥行きを与え、ファンによる考察文化を成熟させる一因となりました。


まとめ:奇跡の決断が生んだ、心を燃やす物語

幻となった、あまりに過酷な運命を背負う炭治郎の物語。それはそれで、深く心に突き刺さる名作になったかもしれません。

しかし、連載会議での激論の末に行われた「主人公の変更」と「テーマの継承」という奇跡的な決断が、『鬼滅の刃』を誰もが共感し、応援できる国民的アニメへと昇華させたことは間違いないでしょう。

この都市伝説は、単なる「没ネタ」や「裏話」ではありません。それは、作者と編集者が読者を第一に考え、物語の核を失うことなく、最高のエンターテイメントを届けようとした格闘の証であり、作品の根幹を形成する「礎(いしずえ)」となったのです。

この記事を読んで、改めて『鬼滅の刃』という物語の奥深さを感じていただけたなら幸いです。ぜひ、この裏設定を知った上で、もう一度アニメや漫画に触れてみてください。炭治郎の優しさや、禰豆子の仕草一つひとつに、新たな発見と感動が待っているはずです。

参考ソース

出典名/媒体内容概要信憑性メモ/公式性
Livedoorニュース「『鬼滅の刃』大ブレイクの陰にあった、絶え間ない努力」「主人公は盲目、隻腕、両足義足という設定で、『世界観のシビアさと主人公の寡黙さ』が落選の理由だったと公式ファンブックで語られていた」という言及。 ライブドアニュース「公式ファンブックで語られていた」という表現あり。公式情報を参照した形の報道。ただし、「公式ファンブック」がどの号・どのページかまで特定されていない。
CREA(文藝春秋) 「炭治郎は脇役だった? … 『鬼滅の刃』を…誕生秘話」初期の企画名『鬼殺の流』、『過狩り狩り』という前身作品名が出てきて、主人公が明るくない重めの設定だったが連載会議で落ち、編集部から普通の主人公提案 → 炭治郎が主人公となった、というストーリー。 CREA編集者の証言(片山達彦氏)を引用している。ファンブックにも言及あり。比較的信頼できるが、詳細は公式資料を確認する必要あり。
“Note.com” 記事「主人公は盲目、隻腕、両足義足 …」など都市伝説/考察寄り。初期設定として「盲目・隻腕・両足義足」の炭治郎が企画にあった、という主張。 note(ノート)ファン・考察系記事。公式の一次情報ではない。伝聞・噂・都市伝説としての扱い。
Wikipedia(日本語版)「鬼滅の刃」「同作の主人公は盲目、隻腕、両足が義足であった。世界設定は読みやすく…」といった記述がある。 ウィキペディアWikipediaは参考程度。情報の出典元が明記されていることを確認すべき。編集者が「公式ファンブック」の内容を根拠としていると書かれているが、一次ソースをたどる必要がある。