「ロブロックスの『99日間生き残る』は実話らしい」——そんな噂を友達やSNSで見た人もいるはずです。2023年にコロンビアで起きた子どもの遭難・生還事故は事実です。ただし、そのニュースが『99日間生き残る』のモデルになったという説を、開発チーム自身が認めた記録は見つかりません。都市伝説ラボがRoblox公式のDeveloper Forum記事と公式データを確認したところ、開発チームが語るタイトルの由来は別のところにありました。鹿・フクロウ・エイリアンという3体の怪物についても、実在するかどうかを一次資料で切り分けます。
この記事でわかること
- 『99日間生き残る』の規模と、開発チームが語るタイトルの由来(Roblox公式Developer Forumより)
- 「2023年の遭難事故がモデル」説が、一次資料でどこまで確認できるか
- 鹿・フクロウ・エイリアンの正体と、ウェンディゴ伝承との関係
『99日間生き残る』とは?Roblox公式データで見る規模
『99日間生き残る(99 Nights in the Forest)』とは、Robloxで仲間と遊べるサバイバルゲームのことです。開発チームの名前は「Grandma’s Favourite Games」といいます。森でキャンプを築き、資源を集めながら、夜ごとに現れる怪物から99日間生き延びることが目標です。Roblox公式APIで確認したところ、累計プレイ回数は296億1,350万回に達し、確認した時点で約23万7千人が同時に接続していました(2026年9月19日確認)。お気に入り登録も957万件を超えています。
ユニバースの作成日は2025年3月4日と記録されています(2026年9月19日確認)。Roblox公式のDeveloper Forum記事(2025年10月31日公開)では、開発チーム自身が「2025年3月に着手し、6月に公開した」と説明しています。社内の制作開始と一般公開の時期には、ずれがあるようです。同記事によると、公開後のピーク時同時接続数は1,400万人に達したといいます。
タイトルの「99」という数字について、Developer Forum記事は興味深い裏話を伝えています。開発チームの一人Cracky4さんは、「100より99のほうが語感が良かった」という理由でこの数字を選んだと語ったそうです。実在の日数や事件を再現した数字ではなく、語呂の良さで決めた数字だったことになります。
「実話」説を検証|2023年の遭難事故がモデルという噂の真偽
「実話」という噂の土台には、実在の出来事があります。ただし、それが本作のモデルだと開発チームが説明した記録は確認できませんでした。2023年5月1日、コロンビアのアマゾン地域で単発機セスナ206が消息を絶ちました。搭乗していた母親を含む3人の大人が死亡し、13歳・9歳・4歳と生後11か月の4人の子どもだけが取り残されました。NPRの報道によると、この機体は「エンジントラブルを起こし、5月1日に消息を絶った」とされています。
子どもたちは最年長のレスリーさんに導かれ、ジャングルの中で40日間を過ごしたのち、コロンビア軍と先住民ガイドの合同捜索によって6月9日に発見・救助されました。世界中で報じられた出来事です。
都市伝説ラボは、Roblox公式のDeveloper Forum記事を確認しました。その範囲で開発チームが語る着想は、「生存日数を競うジャンルの流行」と別のRobloxタイトル「Dead Rails」からの影響でした。そこに「居心地の良い森」というテーマを組み合わせた、というのが開発チームの説明です。コロンビアの事故や実在の遭難事件への言及は、この記事には見当たりません。攻略系のサイトでは「実話がモデル」という説明がよく見られます。それでも都市伝説ラボは、本作を「実話がモデル」とは書きません。なぜなら、開発チーム本人の説明に、その根拠となる記述が見当たらないからです。
噂と現実が結びつきやすいのは、偶然の一致が大きいと考えられます。Developer Forum記事の冒頭にも、森で見かけた影を「迷子の子ども?」と疑う場面が描かれています。森と行方不明の子どもという組み合わせに、現実に起きた生還劇の重みが重なり、両者が同じ出来事のように語られるようになったとみられます。2026年9月19日に確認したRoblox公式ページの説明文は、次の2文だけです。「Build a camp with friends. Something is watching you.」。怪物の設定には触れていません。

鹿(シカ男)の正体|ウェンディゴ伝承との関係
本作で最も恐れられているのが、通称「シカ男」こと鹿の怪物です。夜にプレイヤーを追いかけてくる敵で、実在の生き物ではありません。
この鹿の生まれについては、開発者本人の説明があります。Developer Forum記事でCracky4さんが振り返るのは、「二本足で立つ鹿」がいつの間にか自分のアイデア帳に書かれていたという経緯。ゲームの顔になるマスコット的なキャラクターがほしかったこと、年少のプレイヤーを遠ざけない程度の怖さを狙ったことも語られています。同記事には、特定の伝承や事件をモデルにしたという説明はありません。
一方で、鹿の姿の怪物と聞いて、北米の先住民アルゴンキン語族の伝承に伝わる「ウェンディゴ」を思い浮かべる人もいるでしょう。ブリタニカ百科事典によると、ウェンディゴは飢えと孤立を象徴する怪物として語り継がれてきました。その伝承では「毛がなく、あるいは体毛があり、とがった耳と、鹿のような角や角状の突起を持つことがある」と説明されています。つまり伝承の一部には、鹿を思わせる姿で語られる系統があります。ただし、ゲームの鹿がウェンディゴをもとにしたという開発者の発言は見当たらず、両者の関係は「似ている」の域を出ません。
作品に登場する怖い怪物が、実在の民間伝承をもとに作られること自体は珍しくありません。Crawford(2018)の研究は、技術やデータが壊れることへの不安から生まれる「グリッチホラー」というジャンルを、ファン創作と参加型文化の視点から論じています。プレイヤー同士が物語を語り合い、広げていく過程は、鹿への恐怖が育っていく様子とも重なります。
フクロウ・エイリアンの噂と正体
鹿以外にも、公式設定に登場する怪物がいます。まず一覧で特徴を整理し、そのあとで由来を見ていきます。
| 怪物 | 登場のしかた | 由来について確認できたこと | 実在するか |
|---|---|---|---|
| 鹿(シカ男) | 夜にプレイヤーを追う主な敵 | 開発者が「アイデア帳から生まれた」と説明(伝承との関係は語られていない) | 実在しない |
| フクロウ | プレイヤーの報告で語られる敵 | 公式ページ・開発者インタビューに説明なし | 実在しない |
| エイリアン | まれなイベントとして報告される | 公式ページ・開発者インタビューに説明なし | 実在しない |
フクロウやエイリアンについては、Roblox公式ページにもDeveloper Forum記事にも説明が見当たりませんでした。どこに、どのくらいの頻度で出るのかは、プレイヤーの報告として語られている段階です。遭遇したプレイヤーがSNSで報告し、それが噂として広がっていく構図があります。
Blank と McNeill(2018)は、ネット上に広がる怖い物語(クリーピーパスタ)の性質を論じています。投稿は複数の掲示板を経由して複製されるうちに、書き換えと注釈と再解釈が重ねられていく、という指摘です。「本当かもしれない」という余白を残しながら広まっていく性質は、鹿やフクロウの噂にも重なります。実在の遭難事故という重みが、この余白をいっそう大きく感じさせています。
子どもが怖がる理由と保護者が気をつけたいこと
この作品は、小学生を中心に幅広い年代に遊ばれています。こども家庭庁の令和6年度調査によると、インターネットを利用する小学生(10歳以上)のうち86.6%が「ゲームをする」と回答しており、動画視聴に次いで高い割合です。多くの子どもが遊ぶジャンルだからこそ、噂も広まりやすいと考えられます。
注意したいのは、「実話だから本当に呪われる」といった形で不安をあおったり、友達を怖がらせたりすることです。総務省は、気になる情報を広める前に一度落ち着くことを呼びかけています。
災害時に危険を伝える情報を見たら誰もが慌てます。知らせる・広める前に一度落ち着きましょう。
出典:総務省「インターネットトラブル事例集」良かれと思って拡散した情報がデマだった?!
これはインターネット全般への呼びかけですが、この手の怖い噂とも相性のよい姿勢です。保護者は、怖がる子どもに「鹿もフクロウも作品側の演出で、実在しない」と伝えるとよさそうです。同時に、事故で生き延びた子どもたちは実在したという事実も伝えると、噂と現実の境目がわかりやすくなります。
よくある質問(FAQ)
『99日間生き残る』は実話ですか?
2023年にコロンビアで起きた子どもの遭難・生還事故は事実です。ただし、それが本作のモデルになったという説を開発チームが認めた記録は見つかっていません。都市伝説ラボが確認したRoblox公式のDeveloper Forum記事では、着想は生存ジャンルの流行と別のRobloxタイトルからの影響だと説明されています。
鹿(シカ男)の正体は何ですか?
夜にプレイヤーを追いかけてくる本作の主な敵です。開発者はDeveloper Forum記事で、「二本足で立つ鹿」のアイデアがいつの間にかアイデア帳にあったと語っています。実在の生き物ではありません。
フクロウやエイリアンは必ず登場しますか?
必ず出るという公式の説明はありません。Roblox公式ページや開発者インタビューには出現条件の説明がなく、プレイヤーの報告として語られている段階です。どちらもゲーム内の敵やイベントで、実在の生き物ではありません。
タイトルの「99日間」に元ネタはありますか?
開発チームによると、100日ではなく99日にしたのは語感を優先したためだとされます。特定の実話や事件の日数を再現したものではありません。
まとめ
『99日間生き残る』の怖い噂を整理すると、ポイントは次の3つです。
- 2023年の遭難・生還事故は実在するが、本作のモデルだと開発チームが認めた記録は確認できない
- 鹿(シカ男)は開発者のアイデアから生まれた作品オリジナルの怪物で、実在しない
- フクロウ・エイリアンも実在しない。出現条件について公式の説明は見当たらない
本当の話とつくり話が混ざると、噂はいっそう怖く感じられます。都市伝説ラボでは、ロブロックスに関する噂を幅広く扱った記事や、任天堂作品の噂を横断的に整理した記事、スーパーマリオの噂を検証した記事も、あわせて読める形で用意しました。都市伝説ラボはこれからも、噂の出どころを一次資料からたどる記事を発信していきます。
最終更新:2026年9月19日
※本記事は、Roblox公式のページ・API・Developer Forum記事、政府機関の調査資料、学術文献など公開されている資料をもとに都市伝説ラボ編集部がまとめたものです。個人の見解を含みます。作品の仕様やイベントは更新される場合があるため、最新情報は公式ページでご確認ください。
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著書: 『ネット怪異の解剖学 —— 論文で読み解くインターネット都市伝説』(Kindle) / 『今知っておきたい ネット都市伝説100』(Kindle)
主な参考文献は次のとおりです。
- Crawford, E. (2018)
Glitch Horror: BEN Drowned and the Fallibility of Technology in Game Fan Fiction。 - Blank, T. J. & McNeill, L. S. (2018)
Fear Has No Face: Creepypasta as Digital Legendry(Slender Man Is Coming所収)。 - Roblox社 公式ゲームページ 99 Nights in the Forest。
- Roblox Developer Forum Creator Spotlight: The Story Behind 99 Nights in the Forest。
- ブリタニカ百科事典 Wendigo。
- こども家庭庁「令和6年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」調査結果。
- NPR How Colombia Indigenous kids survived 40 days after a plane crash in the jungle。