映画『口裂け女2』とは、2008年3月22日に公開された上映時間98分の日本のホラー作品のことです。
監督は寺内康太郎、配給はジョリー・ロジャー。作品の解説文は物語の起点を1978年の岐阜県に置きますが、当時のうわさを報じた新聞記事として岐阜県図書館が挙げるのは1979年6月15日付の夕刊です。都市伝説ラボでは、この2つの年号を別々の資料で確かめました。
「口裂け女2」と検索窓に入れると、候補の上位に「実話」「悲しい」という語が並びます。作品の出来よりも、元になった話がどこまで本当なのかを知りたい人が多いということです。
本作の劇場公開日は2008年3月22日、上映時間は98分、監督は寺内康太郎(映画.com 作品情報)。舞台は岐阜県です。映画.comの解説文は「1978年に岐阜県で起こった連続殺人事件」を物語のモチーフにしたと記しています。いっぽう、岐阜県図書館が国立国会図書館の共同データベースへ登録した照会記録が当時の新聞記事として挙げるのは、岐阜日日新聞1979年6月15日夕刊。この1年のずれが、本記事の出発点になりました。
この記事でわかること
- 作品データ(公開日・上映時間・監督・キャスト・配給)を、作品データベース2社の記載だけで整理した結果
- 「実話」と呼ばれる根拠を、1979年の新聞記事と民俗学者の解説に突き合わせた結果
- 元のうわさと作品設定がどこで分かれるのかの比較表
2026年最新の公開情報をもとに、作品側の記録と伝説側の記録をいったん切り離して並べます。※本記事は結末の描写には踏み込みません。
映画『口裂け女2』の基本情報|公開日・監督・キャスト
本作の基本データは、映画.comと「映画の時間」(ジョルダン)の作品情報で一致します。公開日・上映時間・監督・配給・主要キャストの5項目を2つの作品データベースで突き合わせました。スタッフの内訳は映画.comの記載にもとづきます。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 劇場公開日 | 2008年3月22日 |
| 上映時間 | 98分 |
| 製作年・製作国 | 2008年製作・日本 |
| 監督 | 寺内康太郎 |
| 脚本 | 寺内康太郎/佐上佳嗣 |
| 撮影/音楽/美術 | 大沢佳子/佐藤鷹/嵩村裕司 |
| 配給 | ジョリー・ロジャー |
| 製作 | 大橋孝史/小畑良治/仲尾雅至 |
主要な出演者と役どころは次のとおりです。三姉妹の名前は、映画.comの解説文で俳優名と対応づけて示されています。
| 出演 | 役どころ |
|---|---|
| 飛鳥凛 | 三女・真弓(陸上部に所属する高校生) |
| 川村ゆきえ | 長女・幸子(結婚を控えている) |
| 岩佐真悠子 | 次女・雪枝(美容室勤務) |
| 斎藤洋介/中野英雄/真山明大/谷口賢志/草野康太 | 沢田家と町の人々ほか |
映画.comのシリーズ欄には、2006年『口裂け女』、2008年『口裂け女2』、同じく2008年『口裂け女0 ビギニング』、2012年『口裂け女 リターンズ』の4本が並びます。本作は2作目にあたり、全4本のうち2本(50%)が2008年の公開です。うわさそのものの成り立ちは口裂け女の真相はどこまで解明されたのかで整理しています。
あらすじはどこまで公開されているのか|ネタバレなしの範囲
公表されているあらすじは、三姉妹の日常が硫酸事件で壊れる場面までです。映画.comの解説文は、岐阜県で養鶏場を営む沢田家の三姉妹を紹介しています。長女の幸子、次女の雪枝、そして陸上部で学生生活を送る三女の真弓。そこへ雪枝の昔の恋人が現れ、雪枝と間違えて真弓に硫酸をかけます。一家の運命はここから狂っていく、というのが解説文の記述です。
「1978年に岐阜県で起こった連続殺人事件。その事件後に流れた噂をモチーフに口裂け女の誕生秘話を描いたノンフィクションホラー。」
— 映画.com「口裂け女2」作品解説(eiga.com)
同じ解説文が明かしているのは、硫酸事件によって沢田家の運命が狂っていくところまでです。連続殺人事件は1978年の出来事として物語の前提に置かれており、犯人像や結末には触れていません。なお「事件後に流れた噂をモチーフに」という表現は、出来事の再現ではなく着想源を指す言い回しとして読むのが素直です。
『口裂け女2』は実話なのか|設定と一次資料の年号を突き合わせる
先に答えを置くと、本作は実在のうわさに着想を得た創作であり、作品が起点に置く「1978年の連続殺人事件」を裏づける記録は、今回あたった資料の範囲では確認できませんでした。確認したのは次の2点です。

ひとつは、岐阜県図書館がレファレンス協同データベースへ登録した照会記録(管理番号 岐県図-0825/登録番号1000034864、事例作成日2007年3月21日)。質問は「うわさになった当時の新聞に載った想像図の記事を見たい」というものでした。回答として示されたのが、岐阜日日新聞1979年6月15日夕刊の記事「岐阜で生まれた口裂け女 騒ぎやっと下火へ」。備考欄には調査の前提が短く添えられています。
「『口裂け女』の噂は1978年暮頃から翌年にかけて岐阜市内で話題になり、全国に広まった。発信地は美濃加茂市、八百津町、岐阜市などの説があった」
— 岐阜県図書館 レファレンス事例詳細(管理番号 岐県図-0825)/国立国会図書館 レファレンス協同データベース収載 該当事例ページ
もうひとつは、口承文芸を研究する飯倉義之氏(国学院大学文学部准教授)の解説です。飯倉氏によると、始まりは1978年の暮れごろでした。岐阜の八百津町(諸説あり)で、農家の女性が庭の隅に口の裂けた女が立っているのを見た——そんな話が広がり始めます。翌79年初め、岐阜日日新聞がこれを報じました。尾ひれがついたのはその後です。マスク、赤いコート、鎌、100メートル6秒という足の速さ、ポマードを嫌う、べっこうあめを渡すと見逃してくれる。こうした条件が次々に加わりました。
「『口裂け女』 は恐らく純国産『都市伝説』の第1号でしょう」
— 飯倉義之(国学院大学文学部准教授)「『口裂け女』から「きさらぎ駅」まで―都市伝説の変容から振り返る昭和・平成の日本社会」2019年12月27日 (nippon.com)
岐阜県図書館の回答によると、当時の紙面で所在を確認できるのは1979年6月15日夕刊の記事です。2つの資料が共通して描くのも、殺人事件ではなく「目撃談から始まったうわさ」でした。うわさは半年ほどで岐阜から青森・鹿児島まで届き、79年の夏休みが始まるころには沈静化しました。年号でいえば、作品が置く1978年はうわさが語られ始めた時期と重なりますが、事件の性質までは重なりません。発祥地をめぐる諸説は岐阜の都市伝説7選|口裂け女発祥説・両面宿儺・迷宮林道…飛騨美濃の怪異を考察【2026年版】でも扱っています。
※「確認できなかった」は「存在しない」の証明ではありません。今回照合したのは、上記の照会記録と民俗学者の解説の2点、そして作品データベース2社の記載だけです。当時の岐阜県内の紙面をすべて当たったわけではない点を、あらかじめお断りしておきます。照合を行ったのは2026年9月12日です。レファレンス協同データベースで登録番号1000034864の事例を開き、回答文と備考欄を確認しました。国立国会図書館サーチでは書名「ふるさと岐阜の20世紀」で検索し、ヒットは1件。作品データは映画.comと「映画の時間」(ジョルダン)の作品ページを同日に突き合わせています。
作品を「実話」として読む場合の利点、そして注意すべき点は次のとおりです。
| メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|
|
|
「ネタバレ」はどこまで書けるのか|開示された範囲と、その先を書かない理由
都市伝説ラボでは、配給と作品データベースが公表した範囲を超えて結末を記述しません。未見の読者から選択肢を奪わないためです。もうひとつ、なぜなら、見ていない人間が結末を語れば、そこに必ず誤りが混じるからです。
公表済みの範囲を順に並べると、次の3段階になります。
- 岐阜県で養鶏場を営む沢田家の三姉妹が、それぞれの日常を送っている(映画.com 解説文)
- 次女の昔の恋人が人違いで三女に硫酸を浴びせ、一家の運命が狂い始める(同)
- その物語の前提として、1978年の連続殺人事件のあとに流れた噂が置かれている(映画.com 解説文)
作品の副題的な位置づけは「口裂け女の誕生秘話」であり、三女がどう変わっていくのかが物語の軸だと読み取れます。結末まで把握したい場合は、鑑賞後にレビューを読む順序が向いています。※配信状況は時期によって変わるため、視聴手段は映画.comの配信検索ページなどで都度ご確認ください。
なぜ「悲しい」と語られるのか|怪異ではなく被害者から始まる構成
「悲しい」という語が検索候補に残るのは、本作が加害者ではなく被害者の側から物語を始めるためだと考えられます。映画.comの解説文は本作を口裂け女の「誕生秘話」を描くノンフィクションホラーと位置づけ、硫酸をかけられる三女を物語の中心に置いています。
元のうわさでは、口の裂けた女はいきなり現れて子どもを追いかける存在でした。理由も来歴も語られないまま、条件と対処法だけが伝わっていく。飯倉氏の解説にあるとおり、ポマードやべっこうあめといった対処法は、うわさが広がる途中で子どもたちが付け足していったものです。
本作はその順序を反転させます。怪異になる前の生活、家族、名前、そして加害の瞬間を先に見せてから、怪異の姿へつなげる構成です。なぜなら、理由のない恐怖に理由が与えられると、恐怖はそのぶん哀れみへ近づくからです。「悲しい」という感想語も、この置き換えが生んだものと考えられます。
同じ型の転換は、ほかの作品でも起きています。ゲーム版の八尺様を扱ったのが八尺様がいた夏休み考察。漫画側の資料と噂を突き合わせたのが鬼滅の刃の初期設定を検証です。アニメと戦時下の宣伝の関係は『トムとジェリー』は最強のプロパガンダだったのかで追いました。いずれも作品と伝説のずれを扱っています。
元の都市伝説との違い|1978〜79年のうわさと作品設定の比較
両者の違いは、起点・正体・終わり方の3点に集約されます。左列は前節で挙げた資料で確認できる範囲、右列は作品データベースに載る設定です。

| 比べる点 | 1978〜79年に語られたうわさ | 映画『口裂け女2』の設定 |
|---|---|---|
| 起点 | 1978年暮れごろ、岐阜の八百津町などでの目撃談(発信地は美濃加茂市・八百津町・岐阜市などの説あり) | 1978年に岐阜県で起こったとされる連続殺人事件(映画.com 解説文) |
| 正体 | 特定されないまま。マスク・赤いコート・鎌・100メートル6秒・ポマード嫌い・べっこうあめといった条件が後から加わった | 養鶏場を営む沢田家の三女。硫酸事件の被害者として登場する |
| 記録 | 岐阜日日新聞1979年6月15日夕刊に想像図付きの記事が掲載 | 2008年3月22日公開、98分、配給ジョリー・ロジャー |
| 広がり方 | 半年ほどで岐阜から青森・鹿児島まで。塾が学区を越える伝達路になった | 劇場公開と、その後の配信 |
| 終わり方 | 1979年の夏休みが始まるころ沈静化。以後は怪異の一つとして定着 | 物語として結末が用意されている |
表の左列に出てくる記事や書籍は、いずれも所在が公開されています。想像図の掲載先は夕刊だけではありません。前掲の照会記録によれば、岐阜新聞2007年3月10日朝刊の連載「生まれはGIFU」第1回にも掲載があります。書籍では道下淳『ふるさと岐阜の20世紀』(岐阜新聞社、2000年)の「口裂け女」の項(120ページ)に収録されています。国立国会図書館サーチのデータによると、同書は2000年10月の刊行で全201ページ(書誌情報)。
学術的考察|怪異が「人間の悲劇」へ書き換えられるとき
作品が怪異に来歴を与える動きは、民俗学とメディア研究の領域で以前から論じられてきました。ここでは3本の研究を手がかりにします。
1本目は、マサチューセッツ大学アマースト校のAdam J. Johnsonが2015年に提出した修士論文『The Evolution of Yōkai in Relationship to the Japanese Horror Genre』です。江戸期のホラーの主役だった妖怪は、子ども向けのキャラクターへと移っていった。代わりに現代の恐怖を担うのは宇宙人や幽霊、科学が生んだ怪物、そして連続殺人犯だと論じました(Johnson, 2015, doi.org/10.7275/7168837)。怪異の起源を硫酸事件と連続殺人という人間の犯罪に置き換える本作の構図は、この移行の一例として読めます。
2本目は、Aurore Van de WinkelとIan Reillyによる2014年の論考。両氏はゴシップ・うわさ・伝説・ネット上のいたずらを別々のジャンルとして整理しました。担い手、動機、語られる場を区別すべきだという指摘です(Van de Winkel & Reilly, 2014, doi.org/10.21083/nrsc.v0i7.3029)。「この映画は実話か」という問いも、まず「どのジャンルの話として差し出されているか」を分けるところから始まります。宣伝上のジャンル表記と、資料で裏づけられる事実は別の層にあるということです。
3本目は、ユタ州立大学の研究によるものです。Daisy M. Ahlstoneが2019年に提出した論文を取り上げます。絶滅したフクロオオカミをめぐる目撃談と創作を追った研究で、鍵になるのは民俗学でいう ostensive practice。伝承を語るだけでなく、探しに行ったり作品にしたりして再現する行為を指します。この再現が、失われた生き物を語りの中で復活させ続けると論じました(Ahlstone, 2019, doi.org/10.26076/47vr-9a67)。映画化も、お化け屋敷も、SNSへの投稿も、この再現行為に含まれます。1979年の夏に沈静化した話が2008年に映画になり、2026年のいまも検索候補に残っているのは、そのためです。怪異が語られ続ける仕組みは、八尺様の検証記事でも別の角度から扱っています。
よくある質問(FAQ)
『口裂け女2』は実話なんですか?
実在のうわさに着想を得た創作です。作品の解説文は、1978年の岐阜県で起こった連続殺人事件をモチーフにしたと記します。ただし岐阜県図書館の照会記録と民俗学者の解説を当たった範囲では、その事件を裏づける記載は見つかりませんでした。資料が示すのは、1978年暮れごろに始まり1979年6月に沈静化したうわさの流行です。
『口裂け女2』の公開日と上映時間を教えてください。
劇場公開日は2008年3月22日、上映時間は98分です。2008年製作・日本、配給はジョリー・ロジャーと映画.comに記載されています。
前作やシリーズの他の作品はありますか?
あります。映画.comのシリーズ欄には2006年『口裂け女』、2008年『口裂け女2』、同年『口裂け女0 ビギニング』、2012年『口裂け女 リターンズ』の4本が並びます。本作はその2作目です。
『口裂け女2』はなぜ「悲しい」と言われるのですか?
怪異になる前の生活と、加害を受ける瞬間を先に描く構成だからだと考えられます。映画.comの解説文は本作を口裂け女の「誕生秘話」を描くノンフィクションホラーと位置づけており、恐怖の対象に来歴が与えられることで哀れみの感情が生まれやすくなります。
本物のうわさはいつ収まったのですか?
1979年の夏休みが始まるころとされています。岐阜日日新聞1979年6月15日夕刊は「岐阜で生まれた口裂け女 騒ぎやっと下火へ」の見出しで、沈静化の局面を報じました。
まとめ
つまり、本作は1970年代末に実在したうわさの流行を土台にしながら、怪異の来歴を人間の悲劇として作り直した創作です。要点は次の3つに整理できます。
- 作品データは2008年3月22日公開・98分・配給ジョリー・ロジャー・監督 寺内康太郎で、映画.comと「映画の時間」(ジョルダン)の記載が一致する
- 「1978年の連続殺人事件」という設定の裏づけは、岐阜県図書館の照会記録と民俗学者の解説を当たった範囲では確認できなかった
- 資料が示すのは、1978年暮れごろの目撃談から始まり、岐阜日日新聞1979年6月15日夕刊が下火を報じるまでの約半年間の流行である
作品と伝説を混ぜずに並べると、どちらの面白さもかえってはっきりします。都市伝説ラボでは、映像作品と元の怪異のあいだにあるずれを、今後も一次資料の側から追っていきます。
本記事について
最終更新: 2026-09-12 / 編集: 都市伝説ラボ 編集部。本記事は2026年9月までに公開されている情報をもとに作成しました。※作品の配信状況・作品データベースの記載は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個人の感想・見解を含みます。最終的な判断はご自身でご確認ください。ご質問・お問い合わせはお問い合わせフォームから受け付けています。詳しくはプライバシーポリシーをご覧ください。
著書: 『ネット怪異の解剖学 —— 論文で読み解くインターネット都市伝説』(Kindle) / 『今知っておきたい ネット都市伝説100』(Kindle)(書籍紹介ページ)
参考・出典
- 映画.com「口裂け女2 作品情報・キャスト・あらすじ」https://eiga.com/movie/53569/
- 映画の時間(ジョルダン)「口裂け女2 作品情報」https://movie.jorudan.co.jp/film/38860/
- 岐阜県図書館 レファレンス事例詳細(管理番号 岐県図-0825/登録番号1000034864)/国立国会図書館 レファレンス協同データベース収載 該当ページ
- 飯倉義之「『口裂け女』から「きさらぎ駅」まで―都市伝説の変容から振り返る昭和・平成の日本社会」nippon.com、2019年12月27日 該当ページ
- 道下淳『ふるさと岐阜の20世紀』岐阜新聞社、2000年 国立国会図書館サーチ 書誌情報